目切遺跡の地上絵
に関する記述は,生物科学研究所のサイトに移転しました。
2025年12月9日火曜日
2025年2月16日日曜日
Intrasexual behavior in beetles カブトムシ雌の同性間配偶行動
以下の生物科学研究所の研究解説ページも参照。
カブトムシ雌の闘争行動と同性間マウンティング
DOI: 10.5281/zenodo.14281281
次の論文の解説である。
Iguchi Y. (2010)
Intrasexual fighting and mounting by females of the horned beetle Trypoxylus dichotomus (Coleoptera: Scarabaeidae)
European Journal of Entomology, 107: 61-64.
いわゆる,同性間配偶行動 (intrasexual or same-sex mating behavior) である。

Fig. 1. Intrasexual or same-sex mating behavior in female beetles
雄の同性間マウンティングについては,雄が相手を雌と間違えるということもあるだろう。しかしながら,雌の同性間マウンティングについては,その理由が良く分かっていない。
今回の研究結果から,雌の同性間マウンティングは,小さな雌が,大きな雌との闘争を避け,エサを得るための代替的手段である可能性を示唆している。
同性間の行動研究の進展をまとめたレビュー論文としては,以下のものが注目される。
Bailey N. and Zuk M. (2009)
Same-sex sexual behavior and evolution
Trends in Ecology and Evolution 24: 439-446.
この中で,動物における "Homosexual" の定義が以下のように記されている。
Homosexual: in animals, this has been used to refer to same-sex behavior that is not sexual in character.
Bailey 氏から頂いたメールによると,雌が代替的手段 (alternative tactics) を採ることが,ますます明らかになりつつある,とのことである。
また,甲虫類の雌による同性間マウンティングに関しては,以下の論文が注目される。<
Maklakov A. A. and Russell Bonduriansky R. (2009)
Sex differences in survival costs of homosexual and heterosexual interactions: evidence from a fly and a beetle
Animal Behaviour 77: 1375 - 1379.
Maklakov 氏によると,カブトムシのように,雌同士で闘争し,しかもマウンティングする,という種の研究は珍しいようである。
なお,カブトムシの雄同士の配偶行動については,既に論文化されていた。
Iguchi Y. (1996)
Sexual behavior of the horned beetle,Allomyrina dichotoma septentrionalis (Coleoptera,Scarabaeidae)
Japanese Journal of Entomology, 64: 870-875.
関連論文とウェブサイト
井口豊(2001)カブトムシ雄の配偶行動と配偶者選択.昆虫と自然 36 (4): 44-46.
カブトムシ雄の角長と闘争頻度について
Flexible tactics in fighting frequency of small males in the Japanese horned beetle Trypoxylus dichotomus septentrionalis
カブトムシ雄の闘争頻度の柔軟戦術
DOI: 10.5281/zenodo.14134052
日本のカブトムシは Allomyrina か Trypoxylus か? 属名変更を巡って.
DOI: 10.5281/zenodo.14038791
2025年2月11日火曜日
諏訪湖に飛来したアメリカコハクチョウ
諏訪湖に飛来したアメリカコハクチョウ Cygnus columbianus columbianus である。写真は, 2016 年 2 月 1 日のもので,遠くの湖面には氷が見られた頃だ。
上の写真を,拡大したのが次の写真。
数多く見られるコハクチョウ C. c. bewickii に混じって,写真左上に見える,くちばしが真っ黒に近い個体がアメリカコハクチョウである。体も,アメリカコハクチョウのほうが,やや大きめで,何となく堂々としているように見える。
幸運のシンボルなのか,最近は,このアメリカコハクチョウを目当てに訪れる人も多くなってきた。
安曇野市の犀川白鳥湖では,コハクチョウとアメリカコハクチョウの交雑らしい個体が見られるらしい。信濃毎日新聞デジタル 2025-02-11 に掲載された。
飛来地の北側(地図で少し上)には,男女共同参画センター(あいとぴあ)と諏訪湖環境研究センターがある。
男女共同参画センターでは, 2009 年 8 月 23 日に,第 5 回信州ホタル保護連絡会が開催され,招待講演で,日本野鳥の会の林正敏さんが,オオワシのグル
について語った。
続いて,辰野町の外来種ホタル問題(辰野の移入(外来)ホタル 生物多様性の喪失へ)について,私が講演した。
当日の模様は,長野日報 2009 年 8 月 24 日 1 面で紹介された。
2024年12月21日土曜日
ゲンジボタル3型の存在を明記した長野県の生物多様性の解説
長野県環境部自然保護課がまとめた長野県の生物多様性ウェブページに,県内におけるゲンジボタル Nipponoluciola cruciata (以前は Luciola cruciata) の生態的(明滅周期の) 3 型(東日本型,西日本型,中間型)の存在が明確に記されている。
ページ上から 1/4 付近の「遺伝子の多様性」という項目に,下記のように,はっきりと書かれている。
長野県中南部に、この中間型である3秒に1回発光するタイプが存在することが確認されました。
都道府県レベルで,ゲンジボタル 3 型の生息を明記した生物多様性の解説は少ない。
しかし当然と言えば,当然である。ゲンジボタル 3 型がいずれも存在することは珍しい。しかし長野県内では,辰野町松尾峡や上高地のように 2 秒型が観光用に大量移入された状態で存在する(井口, 2024)。それゆえ 3 型が混在するのである(図 1)。

冒頭の長野県の生物多様性解説については,実は,私の研究結果が大いに利用された。長野県環境保全研究所発行の長野県生物多様性概況報告書に, Iguchi (2009) と Iguchi (2010) として引用されたのがそれである。本文では, p.26, 38, 56 の文献番号 94, 95 がそれに当たる。
前者は,辰野町松尾峡における移入外来ゲンジボタルの繁殖を遺伝的・生態的に明らかにした研究であり,後者は,フォッサマグナ地域におけるゲンジボタル 3 型の存在を回帰分析によって明らかにした研究である。
ゲンジボタルについて触れた生物多様性関連の都道府県や市町村の報告書は珍しくない。しかし,自らの自治体内で学術的研究が行われて, 3 型という多様性が明記された例は少ないものと思われる。
関連サイト
- 特異なゲンジボタル生息地,志賀高原・石の湯
- 上高地,志賀高原,辰野町のゲンジボタル:その駆除を巡って
- ゲンジボタルの地理的変異と地質学的事件の関連
- 長野県辰野のホタル再考:観光用の移入蛍で絶滅した地元蛍 松尾峡ほたる祭りの背景にあるもの
参考文献
日和佳政・水野剛志・草桶秀夫(2007)
人工移入によるゲンジボタルの地域個体群の遺伝的構造への影響
全国ホタル研究会誌 40: 25-27.
日和佳政・大畑優紀子・草桶秀夫・井口豊・三石 暉弥(2010)
遺伝子解析による移植されたゲンジボタルの移植元判別法
全国ホタル研究会誌 43: 27-32.
Iguchi Y. (2009) The ecological impact of an introduced population on a native population in the firefly Luciola cruciata (Coleoptera: Lampyridae). Biodiversity and Conservation, 18: 2119-2126.
Iguchi Y (2010) Temperature-dependent geographic variation in the flashes of the firefly Luciola cruciata (Coleoptera: Lampyridae). Journal of Natural History, 44: 861-867.
井口豊 (2024) 上高地,志賀高原,辰野町のゲンジボタル:その駆除を巡って. Zenodo. DOI: 10.5281/zenodo.14513339.
2024年5月1日水曜日
2024年3月21日木曜日
2024年3月2日土曜日
連絡先および研究・教育内容
生物科学研究所
井口豊
Yutaka Iguchi
Laboratory of Biology
Yamashita-cho 1-10-6, Okaya City, Nagano Prefecture,
394-0005 Japan.
e-mail: iguchi.y@lab.ivory.ne.jp
Web Page: https://biolab.sakura.ne.jp
Twitter: @Iguchi_Y
生物科学研究所は,長野県岡谷市の研究教育機関です。人間を含む生物およびその環境を広く研究教育対象としています。
大学生,院生,社会人研究者に対して統計データ解析,研究および論文指導も行っています。
参考ページ:
教育と研究協力
また,一般市民向けの講演の依頼にも応じています。
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- ゲンジボタル3型の存在を明記した長野県の生物多様性の解説 (1)
- コクワガタ3型の論文が,チェコ・カレル大学の卒論で引用された (1)
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