2024年12月21日土曜日

ゲンジボタル3型の存在を明記した長野県の生物多様性の解説

ゲンジボタル3型の存在を明記した長野県の生物多様性の解説

長野県環境部自然保護課がまとめた長野県の生物多様性ウェブページに,県内におけるゲンジボタル Nipponoluciola cruciata (以前は Luciola cruciata) の生態的(明滅周期の) 3 型(東日本型,西日本型,中間型)の存在が明確に記されている。

ページ上から 1/4 付近の「遺伝子の多様性」という項目に,下記のように,はっきりと書かれている。

長野県中南部に、この中間型である3秒に1回発光するタイプが存在することが確認されました。

都道府県レベルで,ゲンジボタル 3 型の生息を明記した生物多様性の解説は少ない。

しかし当然と言えば,当然である。ゲンジボタル 3 型がいずれも存在することは珍しい。しかし長野県内では,辰野町松尾峡や上高地のように 2 秒型が観光用に大量移入された状態で存在する(井口, 2024)。それゆえ 3 型が混在するのである(図 1)。


図 1. 北陸,関西と長野県のゲンジボタルの DNA の 3 タイプ(日和ほか,2007; 2010)

冒頭の長野県の生物多様性解説については,実は,私の研究結果が大いに利用された。長野県環境保全研究所発行の長野県生物多様性概況報告書に, Iguchi (2009)Iguchi (2010) として引用されたのがそれである。本文では, p.26, 38, 56 の文献番号 94, 95 がそれに当たる。

前者は,辰野町松尾峡における移入外来ゲンジボタルの繁殖を遺伝的・生態的に明らかにした研究であり,後者は,フォッサマグナ地域におけるゲンジボタル 3 型の存在を回帰分析によって明らかにした研究である。

ゲンジボタルについて触れた生物多様性関連の都道府県や市町村の報告書は珍しくない。しかし,自らの自治体内で学術的研究が行われて, 3 型という多様性が明記された例は少ないものと思われる。

関連サイト

参考文献

日和佳政・水野剛志・草桶秀夫(2007)
人工移入によるゲンジボタルの地域個体群の遺伝的構造への影響
全国ホタル研究会誌 40: 25-27.

日和佳政・大畑優紀子・草桶秀夫・井口豊・三石 暉弥(2010)
遺伝子解析による移植されたゲンジボタルの移植元判別法
全国ホタル研究会誌 43: 27-32.

Iguchi Y. (2009) The ecological impact of an introduced population on a native population in the firefly Luciola cruciata (Coleoptera: Lampyridae). Biodiversity and Conservation, 18: 2119-2126.

Iguchi Y (2010) Temperature-dependent geographic variation in the flashes of the firefly Luciola cruciata (Coleoptera: Lampyridae). Journal of Natural History, 44: 861-867.

井口豊 (2024) 上高地,志賀高原,辰野町のゲンジボタル:その駆除を巡って. Zenodo. DOI: 10.5281/zenodo.14513339.