2012年5月26日土曜日

全国ホタル研究会・第45回大会(鹿児島県霧島市)無事終了



今年の全国ホタル研究会・第45回大会は,鹿児島県霧島市・霧島国際ホテルで,5月18~20日に開催され,貴重な研究発表と盛んな質疑応答が見られた。


今年の発表題目は以下の通り。
  1. ホテルの舞う里 郷土「霧島」を目指して.  霧島市立霧島中学校ホタル部
  2. 駅前ホタル会の活動について.  駅前ホタル会
  3. 地域連携による「ホタルの里」作りについての活動報告.  鹿屋市王子町ホタル同好会
  4. ゲンジボタルの水路にカンレイシャを使用してみて.  大村俊朗・幸野昌廣
  5. ホタル移植指針とホタル再生・保護運動.  村上伸茲
  6. 400年余の歴史を刻む善光寺用水の改修とホタルを主体とした生き物の保全(1).  三石暉弥
  7. 資料,文献にみるヘイケボタルの化性とゲンジボタル.  大内紘三
  8. 長野県辰野町の在来ゲンジボタルの発光パターン.  井口豊
  9. 横浜市におけるゲンジボタルの明滅周期について~在来個体群と移入個体群の比較~.  後藤好正
  10. 東アジアに分布するスジグロベニボタル属 Pristolycus ホタルの外部形態・色彩斑紋変異と生息環境.  大場信義
私の発表内容に関しては,以下のサイト参照。

井口豊 (2012) 長野県辰野町の在来ゲンジボタルの発光パターン. 全国ホタル研究会誌 45: 33-34.
DOI: 10.13140/RG.2.2.27007.38568

下の写真は,ホテルから見える湯煙。いかにも温泉地帯。

今回,両親を同伴したが,母が車椅子移動だったので,途中多くの方々にお世話になった。

JR東海道・山陽・九州新幹線の車掌さん,名古屋・米原・新大阪・博多・鹿児島中央駅の駅員さんには,非常に親切にして頂き,列車乗り降りや移動でお世話になった。大感謝!!

同時に,車椅子での旅行がいかに大変かも分かった。

また,会場では,実行委員長・上野武次氏に大変お世話になりました。
上野さんの娘さん姉妹に,母の霧島国際ホテル大浴場の入浴まで世話して頂いた。感謝,感激!!このホテルの大浴場は,入り口から平坦で入りやすかった。

両親と宿泊した同ホテルのバリアフリールームの紹介は,こちら

下の写真は,その姉妹に付き添われた母の様子。



色々な人たちの親切と情に触れた旅でした。もちろん,研究者との貴重な情報交換も出来た。

福井工大・草桶秀夫先生とは,新たに発見された石川県・能登島の移入らしきゲンジボタルについて話を交わした。

また,辰野町の移入ホタル増殖拡散問題については,草桶先生だけでなく,辰野町・松尾峡の外来種ホタル移入元になった守山市の竹内辰朗氏(滋賀県・守山市ほたるの資料館の前館長)とも話ができ有意義だった。

関連ウェブページ
長野県辰野のホタル再考:観光用の移入蛍で絶滅した地元蛍 松尾峡ほたる祭りの背景にあるもの
辰野のホタル 町おこしと保護の課題 - 滋賀県守山市・環境学習会

2012年4月27日金曜日

岡谷市・横河川沿いの桜


岡谷市を流れる横河川沿いの桜が満開を迎えている。


写真は,岡谷温泉ロマネット(下の地図のA地点)西側付近の4月26日の様子である。
ここの湯は茶色っぽい色をしており,一度は入浴してみると良いだろう。
この地点の300mほど下流,諏訪湖に流入する付近が,ハクチョウの飛来地である。



大きな地図で見る


桜まつり」(横河川桜アーチ)と称するようになったためか,最近では,県外からの観光バスも来るから,ちょっと驚きだ。

2011年12月2日金曜日

ナミテントウ(Harmonia axyridis)と千野光茂博士

ナミテントウ(Harmonia axyridis)と千野光茂博士

2011 年 11 月 29 日 13:20 に,岡谷市山下町の道路脇コンクリート上を歩いているナミテントウ Harmonia axyridis を見つけた。

属名ハルモニア Harmonia が美しい響きであり,テントウムシの一般英名 lady beetle も,かわいい。

次の写真は,撮影するため,少し触って動きを止めた状態である。

気温は 11.5 ℃ であったが,コンクリート面上で測ると, 15.1 ℃ であった。成虫越冬するとはいえ,あさってから 12 月という時期に活動しているのを諏訪地方で見かけるのは珍しい。ちなみに,この 2 日後の 12 月 1 日に岡谷市で初雪が降った。

フタボシテントウとでも言いたい模様だが,実は,このテントウムシの模様には,様々な種内変異が知られている。今回観察されたタイプは,二紋型(conspicua)である。かつて,生物学者・千野光茂博士が諏訪地方を中心に長年にわたり,各タイプの割合の移り変わりを調べた。その結果,二紋型が増加傾向にあり,それが気温上昇に関連するらしい,ということを突き止めたという,記念すべき種である。

その研究の一端は,遺伝学の権威であった駒井卓・京都大学教授が全国のナミテントウの紋様変化を調べたデータと共に,下記の共著論文で知ることができる。

Taku Komai, Mitsushigé Chino, and Yasusi Hosino (1950)
Genetics. 1950 September; 35(5): 589–601.
Contributions to the Evolutionary Genetics of the Lady-Beetle, Harmonia. I. Geographic and Temporal Variations in the Relative Frequencies of the Elytral Pattern Types and in the Frequency of Elytral Ridge
http://www.genetics.org/content/35/5/589.full.pdf

千野博士は諏訪市出身で京都大学理学部助教授だったが,戦後,旧制・諏訪中学が新制・諏訪清陵高校になるのに伴い,郷土出身の著名な学者を呼ぼうと言いうことになり,初代校長を務めた(是非にと,頼み込んだらしい)人物である。

他県の人から見れば,遺伝学者・千野光茂としか知られてないことが多いが,諏訪では有名な教育者であった。彼が校長当時,生徒だった人物に, 1996 年に第 5 回相澤忠洋賞を受賞された考古学者・武居幸重氏がいる。武居氏は当時,生物部員であり,授業をさぼっては千野校長の手伝いで裏山に登り虫を取っていたことを述懐している(縄文心象ブログ)。

校長が生徒をさぼらせて,自分の研究の手伝いとは優雅な時代である。しかし,そんな経験が武居氏の考古学での業績を生んだのかもしれない。

千野は,八ヶ岳におけるミヤマシロチョウ Aporia hippia japonica の発見者でもある。以下のページで,そのことにも触れた。

テントウムシと温暖化の関連では,私の研究室のウエブページも参照して欲しい。<

文化昆虫学者・高田兼太(Takada, 2013)による,尼崎市のケーキハウスショウタニ武庫之荘店の「柚子とホワイトチョコのムース」のテントウムシのトッピング関する論考にも触れてある。

2011年11月23日水曜日

姨捨からの夜景

鉄道駅としては,全国有数の夜景の名所,JR篠ノ井線・姨捨駅が 2011 年に開業 111 周年を迎えた。

全国に夜景の名所と呼ばれる地は多いが,姨捨の特筆すべき点は,姨捨駅からだけでなく,長野自動車道・姨捨サービスエリアからも,ほぼ同じアングル(東方,地図右側)で千曲川沿いに広がる見事な夜景が見られることである。


より大きな地図で 姨捨駅・姨捨サービスエリア を表示

下の写真は,姨捨サービスエリアから見た夜景。写真撮影の人やカップルもしばしば見かける。

姨捨駅は日本三大車窓のひとつとされ,今では全国でも数少ないスイッチバック方式の駅である。徳富政樹氏のブログに,その様子と解説がある。

姨捨サービスエリアは日本の夜景百選に選ばれている。

姨捨駅は特急が止まらないため,夜景を見る場合は,普通列車に乗る必要がある。あえて下車しなくても,停車時間程度でも夜景が堪能できる。

姨捨は,深沢七郎の楢山節考(今村昌平が同名映画化) にも取り上げられた姨捨伝説の残る地とされる。

2011年7月10日日曜日

諏訪市・西山のシカ,接近!

諏訪市・西山のシカ,接近!

2011 年 7 月 6 日の夜半ごろ,諏訪市・西山で,昆虫の野外調査中のことであった。シカ (ホンシュウジカ, Cervus nippon centralis) とバッタリ出会った。

しかも 3 ~ 4 m くらいの距離。シカは,しばらく,そこにたたずんでいた。

これだけ接近したのは,奈良公園や厳島神社で見たシカ以来だ。

シカを見るだけならば,かわいい,で終わってしまうのだが,それによる県内の食害を考えるとき,気が重くなる(参考: 長野県 野生鳥獣被害対策本部について)。

ここから 1 km ほど辰野側に下った鴻の田地区(下の地図,赤色部分)は,辰野町在来のゲンジボタル Nipponoluciola cruciata (以前は Luciola cruciata) 生息地として有名である。

参考ウェブページ


辰野町に残る在来ゲンジボタル生息地: 鴻ノ田