2018年2月27日火曜日

興味深い心理学卒業論文:思春期の睡眠と大学生の自尊感情について

玉川大学教育学部教育学科の小泉緑さんから,卒論が完成したとの連絡があった。SPSSを用いた統計データ解析について私が指導したので,末尾に謝辞を頂き,私自身も嬉しい。

玉川大学教育学部
平成29年度卒業研究論文
指導担当 高平小百合教授

思春期の睡眠と大学生の自尊感情について

教育学部教育学科
小泉 緑

大学生を対象にして,中学時代と現在の睡眠状況が,現在の自尊感情と社会的スキルにどのように影響しているかを分析したものである。

睡眠の質は Pittsburgh Sleep Quality Index (PSQI),社会的スキルは Kiss-18,自尊感情は Rosenberg 尺度に基づいて測定された。小泉さんからデータを渡されたとき,これらの尺度について私も知っていたので,非常に興味を覚えた。特に, Rosenberg 尺度は,日本でも非常に多くの研究で使われている。ただし,社会的スキルは有意な違いが出ないのではないか,という予感がした。

因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行い,社会的スキルについては,4個の因子(感情抑制,高度なコミュニケーション,初歩的なコミュニケーション,計画)を抽出し,自尊感情については2個の因子(自尊心,自己拒否)を抽出した。

社会的スキルについては,やはり,いずれの因子も睡眠障害とは有意な関連を認めなかった。一方で,自尊感情尺度の自己拒否因子には,睡眠障害と有意な関連が認められた。睡眠障害があると,自己拒否の傾向が強くなるのである。しかも,中学時代には睡眠障害が無く,大学生になってからそれが現れると,自己拒否感が強くなるのである。なお,多重比較では,、Ryan-Einot-Gabriel-Welsch 検定が用いられた。

小泉さんのデータが見事に活用され,苦労が報われた研究結果と言えよう。

平成29年度に,私が卒論の統計データ解析を指導した二人は,偶然にも心理学分野だった。もう一つの卒論は,以下のページ参照

その他の統計学上の話題は,私の研究室の解説リスト参照

2018年2月26日月曜日

ピロリ菌除去と胃症状の改善を調べた興味深い研究


ピロリ菌 Helicobacter pylori は,胃ガンとの関連性が指摘されて,最近テレビや新聞でも,しばしば取り上げられる話題である。

そのピロリ菌の除去が,実際に,胃症状の改善にどの程度役立つかを調べたのが,小熊らの研究である。

小熊一豪ほか(2017)
Helicobacter pylori 除菌前後における消化器症状の検討
Progress of Digestive Endoscopy, 91(1): 52-56.

私は,小熊氏から統計データの解析支援を要請された。調査対象となった症状は,胃痛,胃もたれ,胸やけ,膨満感,食欲不振,げっぷ,胃酸逆流,吐き気の8種類であった。

データを見せられる前には,この中から2,3種類の症状は改善するだろうと思っていた。しかし,実際にデータを渡されて統計解析してみると,これら全てが,ピロリ菌除去後には,有意に改善されていた。逆に言えば,これらの症状に悩む人々が,実はピロリ菌感染の影響を受けている例も多いだろうと推察された。

これらの症状に長く悩んでいる人は,是非,ピロリ菌感染の検査を受けて欲しいし,その感染が明らかになったら,積極的に除去してもらうことを勧めたい。

その他の統計学上の話題は,私の研究室の解説リスト参照

白馬村の天然記念物「神城断層」:2014年長野県神城断層地震の痕跡

2014年11月22日長野県北部で発生したM6.7の地震では,糸魚川-静岡構造線系の活断層「神城断層」に沿って,白馬村を中心に大きな被害が出た。

その地震よって生じた撓曲構造の一つが,2015年3月5日に,白馬村の天然記念物「神城断層」に指定された(白馬村行政ホームページ,白馬村指定文化財)。

しかしながら,この行政ページには,その断層の位置図が掲載されていないので,その位置が分かりづらい。しかも,これが白馬村天然記念物だということ自体が,あまり知られていない気がする。

まずここに Google マップで,その位置を示す。白馬村,城山の西側,共和工業(株)の敷地内に,その天然記念物の断層がある。



神城断層地震から3年経た2017年10月11日に,白馬村における地形と植生の現状を,私は調査した(井口,2017)。そのとき,天然記念物「神城断層」は,次の写真のように,ビニールシートで覆われていたが,撓曲構造がそのまま残され保存されていた。写真奥に見えるのが城山であり,城山の南西側から北東に向かって撮影されたものである。東側が隆起した神城断層の活動状況が残されている。

白馬村天然記念物「神城断層」

Google マップの航空写真でも,この天然記念物「神城断層」の所在がよくわかる。



日本活断層学会2017年度秋季大会で,岡田(2017)は,日本各地で活断層観察施設が充実していくことの重要性を強調した。しかし,残念ながら,白馬村の天然記念物「神城断層」は,ビニールシートで覆われただけであり,説明の看板すらなかった(2017年10月11日時点)。せっかく村の天然記念物として保存するのだから,せめて説明看板を設置してほしかった。

ウィキペディアの神城断層の項目にも,天然記念物「神城断層」の場所の記述がなかったので,役場ホームページのリンク先とともに,追記した(2018年3月4日(日)08:13,Iguchi-Y)。

白馬村大出の神城断層沿いの倒木の特徴が統計学的に調べられ,断層崖に直交する方向から左寄りに倒れている地点があり,左横ずれ断層運動の影響を受けていると推定された(井口,2018)。

参考文献
井口豊 (2017) 2014年長野県神城断層地震後の地形と植生の変化. 日本活断層学会2017年度秋季学術大会講演予稿集: 102-103.
井口豊 (2018) 2014 年長野県北部地震における神城断層沿いの森林被害の特徴. 日本地理学会発表要旨集 93: 231(2018 年度日本地理学会春季学術大会)
岡田篤正 (2017) 活断層資料の集中的な保管・収集に向けた資料館の必要性. 日本活断層学会2017年度秋季学術大会講演予稿集: 34-35.
下田力・大塚勉・佐藤翔・加藤祐輝(2016)長野県白馬村における神城断層の地形を利用した歴史遺構.信州大学環境科学年報 38: 79-88.