2023年12月31日日曜日

2021年11月20日土曜日

大鹿村の中央構造線

長野県南部,大鹿村で見られる中央構造線

中央構造線(Median Tectonic Line, MTL)は,九州から,四国,紀伊半島を通り,諏訪湖に達する大断層である。
大鹿村では,その断層が明瞭に観察され,中央構造線博物館は,その断層上にあり,2011年5月4日に訪問した。


次の写真は,博物館裏手に見える崖崩れ跡で,1961年の水害で出来たものである。


露出している白っぽい岩石(雪ではない!)は,いわゆる「鹿塩(かしお)マイロナイト」。大学地学の教科書にも出てくる,断層のずれによって変形・変質して出来た有名な岩石。

写真の崖崩れ跡を見て分かるように,この岩石はもろく崩れやすいが,この大鹿村近くで,この断層をトンネルで横切って通過させようと計画されているのが中央リニア新幹線である。

中央構造線に沿って,この大鹿村北方には,分坑峠があり,最近パワースポットとしてテレビでも取り上げられる。博物館にも,このパワースポットについて質問するお客さんたちが来ていて,少々びっくりした。

大鹿村以北の中央構造線の活動時期に関して,高木ほか(2019)によって,大鹿村の北北東,約 30 km に位置する伊那市・長谷の美和湖東岸で,10 万年前以降に活動したことが認められている。

参考文献
高木秀雄・杉山幸太郎・田村糸子・水野清秀・北澤夏樹・河本和朗 (2019)
長野県伊那市の中央構造線非持露頭における最新活動の認定
活断層研究 50: 1-12.

2018年10月10日水曜日

北海道・新函館北斗駅,窓ガラスのデザインは「赤とんぼ」

北海道・新函館北斗駅,窓ガラスのデザインは「赤とんぼ」

2018 年 7 月 21 日に,北海道・稚内市で,第51回全国ホタル研究会 北海道稚内・豊富大会が開催された。

私の発表は以下のとおりであった。

井口豊 (2018) ホタルの文化昆虫学研究史 ― 全国ホタル研究会誌を例として ―.全国ホタル研究会誌 51: 6-8. PDF

北海道新幹線で行き,終点で下車したところが, JR 新函館北斗駅である。駅内および周辺の様子は,函館市公式観光情報の北海道新幹線・新函館北斗駅、徹底ガイドを見てほしい。

下の写真が,その駅の出入り口である。

JR新函館北斗駅

ガラス中央付近を見て欲しい。

JR新函館北斗駅の窓ガラスの赤とんぼ模様

赤とんぼ,赤とんぼ・・,赤とんぼの群飛なのである。ここだけでなく,2階へ上がって改札内にある窓ガラスにも,赤とんぼが描かれている。

駅内 1 階通路にあるイベントスペースを覗くと,この理由がすぐ分かる。

JR新函館北斗駅イベントスペース,三木露風の童謡「赤とんぼ」ゆかりの地の解説

童謡「赤とんぼ」の作詞者・三木露風ゆかりの地がここなのだ。

三木露風と言えば,生誕地は,兵庫県たつの市であり,赤とんぼは,そこのイメージキャラクターになっている。たつの市ホームページを見ると,それがよくわかる。これについては,高田兼太のイトメン・チャンポンめん論文も是非読んで欲しい。たつの市にあるイトメン株式会社のキャラクターが,「赤とんぼ」に由来することを論じている。

高田兼太(2018)
食品パッケージに見られるレアな昆虫の事例Ⅱ
イトメン株式会社の「チャンポンめん」
伊丹市昆虫館研究報告 第6号

新函館北斗駅には,外国人旅行者も,かなり多く見られた。しかし,残念なことに,この赤とんぼ模様に気づく人は,ほとんどいないようだ。JR北海道(特に,北海道新幹線)も,北斗市も,これをもっと宣伝しても良いと思う。

関連ページ

2016年3月25日金曜日

象神崖(岡谷市横河川):糸魚川-静岡構造線との関連?

象神崖(岡谷市横河川):糸魚川-静岡構造線との関連?

2016 年 3 月 1 日,デリシア岡谷店の南側入り口から見た象神崖の遠景である。

象神崖(岡谷市横河川・菅の沢)をアップルランド・デリシア岡谷店から臨む。

岡谷市の地形・地質学的ランドマークと言える崖崩れ跡である。諏訪の自然誌・地質編(諏訪教育会,1975)によると,北西-南東に伸びる象神崖断層が確認された場所でもあり,雪が積もっている時期は,特に,目立つ。

グーグルマップでも,その崖崩れの様子が,はっきりと分かる。赤線が,諏訪の自然誌・地質編に記された象神崖断層。

象神崖断層のような横河川上流を横切る NW-SE 方向の断層は,塩嶺層が堆積した第四紀後半以降に活動したものだろう。諏訪盆地を横切る糸魚川-静岡構造線系の活断層の歴史を考える上でも興味深い。

しかし,この地形に,デリシア岡谷店に出入りする人々は,ほとんど気づかないようで残念だ。

2014年6月18日水曜日

コクワガタ3型の論文が,チェコ・カレル大学の卒論で引用された

コクワガタ3型の論文が,チェコ・カレル大学の卒論で引用された

コクワガタ3型に関する私の論文

Iguchi (2013)
Male mandible trimorphism in the stag beetle Dorcus rectus (Coleoptera: Lucanidae)
European Journal of Entomology, 110: 159-163.

これが,チェコ・プラハのカレル大学の学生卒論に引用されていた。

原題:
Mechanismy sexuální selekce u listorohých brouků se zaměřením na podčeleď Scarabaeinae (Coleoptera: Scarabaeoidea)

英文タイトル:
Sexual selection in Scarab beetles with empahsis to the subfamily Scarabaeinae (Coleoptera: Scarabaeoidea)

著者:
Kateřina Kněnická

この p.30 である。ただし,本文がチェコ語のため,私も正確には読めないのが難点である。

少し驚いたのは,自分としては,形態学的な研究 (morphological study) を実施したつもりなのだが,性選択 (sexual selection) の卒論に引用されていたことである。しかも,主要結果のグラフではなく,コクワガタの大顎の変異を示した次の写真が,そのまま引用されていた。

Mandible trimorphism in the stag beetle
Male mandible trimorphism in the stag beetle Dorcus rectus (Iguchi, 2013)

いずれにしても,学生に引用されたのは,ベテラン研究者に引用されるより嬉しい。コガネムシ科(family Scarabaeidae)を勉強する上で基礎的文献とみなされた(と自分では思う)からである。

ただし,このコクワガタ論文が掲載された雑誌 European Journal of Entomology がチェコで発行されている雑誌なので,引用しやすかったのかもしれない。

なおこの論文は,ロジスティック回帰 (logistic regression) とセグメント回帰 (segmented regression) を使った最適統計モデルを,AIC (赤池情報量規準 AIC, Akaike's Information Criterion) で探索したものである。

AIC は,故・赤池弘次が残した情報理論に関する,日本が世界に誇る業績である。しかしながら,大学の授業で統計学を学んだ学生でも, AIC の理論や用法,さらには赤池のことを知らない人も多い。

統計数理研究所のウェブサイトには,赤池弘次の業績を紹介した赤池記念館がある。大学の統計学の授業でも,赤池のことに是非触れて欲しいものだ。 2006 年に第 22 回京都賞を受賞したときの赤池のメッセージが YouTube に残されている。

このコクワガタ論文では,オス大顎 3 型の分類に関して,写真 (a), (b), (c) の形態的分類とセグメント回帰による 3 直線フィットの分類の一致度を調べた。その際, Fleiss カッパ係数 (Fleiss’ kappa statistic k) が使われた (Fleiss, 1971)。その結果は, κ=0.81 で,両者の分類が,非常に良い一致を見ることが判明した。

Cohen カッパ係数と Fleiss カッパ係数の違いや,その意味するものについては,以下の論文に詳しく解説されている。

統計解析を用いた信頼性の評価 1
倉持龍彦・對馬栄輝・下井俊典・井口豊・宮田賢宏・大塚紹・大友学・若狭伸尚・村野勇・米津太志・角田恒和
医工学治療 30 (2): 73-77. (2018)

なお,「セグメント回帰」を「折れ線回帰」と呼ぶ場合があるが,これは必ずしも正しくない。不連続で断片的な直線として表される場合が存在するからである。コクワガタの例がそれである。

セグメント回帰は,私が統計解析を指導した松延祥平さん(当時,筑波大学修士院生)の研究でも使われ,優れた結果が専門誌に掲載された。

Matsunobu S. and Sasakura Y.
Time course for tail regression during metamorphosis of the ascidian Ciona intestinalis
Developmental biology, 405(1), 71-81.

その論文 Fig 4D がセグメント回帰である。

セグメント回帰に関しては,以下のページも参照。

そこでは,私自身の最近の研究と,私が統計データ解析を協力した島田さんの研究,ともに樹木選定 (tree pruning) に関する論文を扱った。

Iguchi, Y. (2024)
Change Point Analysis to Detect the Effect of Pruning Severity on Tree Growth
Open Journal of Forestry 14: 67-73.

Shimada, H. (2023)
Effects of Pruning Types on Tree Vigor of Bamboo-Leaf Oak Inferred from Allometric Analysis
American Journal of Plant Sciences, 14, 1430-1438.

放送大学「統計学」(藤井良宜)は,初歩的な科目ではあるが,第 1 回から,いきなり AIC を解説し,赤池弘次氏が京都賞を受賞したことにも触れている。放送大学の講義内容には感心するものが多い。

参考文献
Fleiss J.L. (1971)
Measuring nominal scale agreement among many raters
Psychol. Bull. 76: 378–382.

このコクワガタの 3 型論文は,ザトウムシ(harvestmen)の一種 Pantopsalis cheliferoides の 3 型を研究した以下の論文に引用された。

Painting et. al (2015)
Multiple exaggerated weapon morphs: a novel form of male polymorphism in harvestmen
Scientific reports, 5.

日本では,動物の 3 型の研究が,まだまだ進んでいない。これは,多型と言えば 2 型,という先入観があるためかもしれない。日本のカブトムシの 型に関しても,以前,私が報告した。

Iguchi Y (2000)
Male trimorphism in the horned beetle Allomyrina dichotoma septentrionalis (Coleoptera, Scarabaeidae)
Kogane, 1: 21-23.

Iguchi Y (2002)
Further evidence of male trimorphism in the horned beetle Trypoxylus dichotomus septentrionalis (Coleoptera, Scarabaeidae)
Special Bulletin of the Japanese Society of Coleopterology, 5: 319-322.

前者は,以下の論文に引用された。コガネムシ研究会発行の雑誌 Kogane で,海外の研究者に引用された最初の論文かもしれない。

Rowland, J. M. and Emlen, D. J. (2009)
Two thresholds, three male forms result in facultative male trimorphism in beetles
Science, 323: 773-776.

日本のカブトムシの 3 型が,どのような状況で出現するのか,行動的な違いが見られるのか,などの研究も進んでいない。

なお,コクワガタに形態的に良く似たスジクワガタ雄にも 2 型が見つかっている。

Iguchi, Y. (2003)
Male Morphological Dimorphism in the Stag Beetle Dorcus binervis (Coleoptera: Lucanidae)
Special Bulletin of the Japanese Society of Coleopterology, 6: 207-210.

2014年2月4日火曜日

2013年12月4日水曜日

変色したアマガエル

変色したアマガエル

2013 年 10 月 21 日に,岡谷市今井のコンクリート上で,ニホンアマガエル Hyla japonica を見つけた。最初は,小石かチューインガムの捨てたものと思った。

しかし,近づいてみると,灰褐色に変色したニホンアマガエルだった。

日本に広く分布し,人目にも付きやすい,いわゆる「アマガエル」である。通常は,青緑色をしているが,土,枯葉,コンクリートなどの上では,このような色に変色し,体の模様も明瞭になってくる。

お見事!と言いたいところだが,コンクリート上では少々目立ちすぎの感がある。やはり,人工物の色に似せるのは至難の業なのだろうか?研究課題である。