以下の生物科学研究所の研究解説ページも参照。
カブトムシ雌の闘争行動と同性間マウンティング
DOI: 10.5281/zenodo.14281281
次の論文の解説である。
Iguchi Y. (2010)
Intrasexual fighting and mounting by females of the horned beetle Trypoxylus dichotomus (Coleoptera: Scarabaeidae)
European Journal of Entomology, 107: 61-64.
いわゆる,同性間配偶行動 (intrasexual or same-sex mating behavior) である。
Fig. 1. Intrasexual or same-sex mating behavior in female beetles
雄の同性間マウンティングについては,雄が相手を雌と間違えるということもあるだろう。しかしながら,雌の同性間マウンティングについては,その理由が良く分かっていない。
今回の研究結果から,雌の同性間マウンティングは,小さな雌が,大きな雌との闘争を避け,エサを得るための代替的手段である可能性を示唆している。
同性間の行動研究の進展をまとめたレビュー論文としては,以下のものが注目される。
Bailey N. and Zuk M. (2009)
Same-sex sexual behavior and evolution
Trends in Ecology and Evolution 24: 439-446.
この中で,動物における "Homosexual" の定義が以下のように記されている。
Homosexual: in animals, this has been used to refer to same-sex behavior that is not sexual in character.
Bailey 氏から頂いたメールによると,雌が代替的手段 (alternative tactics) を採ることが,ますます明らかになりつつある,とのことである。
また,甲虫類の雌による同性間マウンティングに関しては,以下の論文が注目される。<
Maklakov A. A. and Russell Bonduriansky R. (2009)
Sex differences in survival costs of homosexual and heterosexual interactions: evidence from a fly and a beetle
Animal Behaviour 77: 1375 - 1379.
Maklakov 氏によると,カブトムシのように,雌同士で闘争し,しかもマウンティングする,という種の研究は珍しいようである。
なお,カブトムシの雄同士の配偶行動については,既に論文化されていた。
Iguchi Y. (1996)
Sexual behavior of the horned beetle,Allomyrina dichotoma septentrionalis (Coleoptera,Scarabaeidae)
Japanese Journal of Entomology, 64: 870-875.
関連サイト
カブトムシ雄の角長と闘争頻度について
Flexible tactics in fighting frequency of small males in the Japanese horned beetle Trypoxylus dichotomus septentrionalis
カブトムシ雄の闘争頻度の柔軟戦術
DOI: 10.5281/zenodo.14134052
日本のカブトムシは Allomyrina か Trypoxylus か? 属名変更を巡って.
DOI: 10.5281/zenodo.14038791