2013年12月30日月曜日

長野県岡谷市の塩嶺西山地域における断層と地すべり地形: 日本活断層学会2013年度大会発表


日本活断層学会2013年度秋季学術大会が,11月29-30日に,つくば国際会議場で開催され,私も発表してきた。全体の発表予稿集は,日本活断層学会のウェブページから入手できる.

下の写真は,会場1階の入り口付近。



30日には,シンポジウム「活断層とは何か-その本質とリスク」が開催。




このシンポジウムだけに参加した人も何人かいたが,それでも,もっと多くの人に見てもらいたかった。ただし下の写真は,シンポジウム開始前の様子。



ポスター発表での質疑応答は活発だった。

矢印が,私の発表:
長野県岡谷市の塩嶺西山地域における断層と地すべり地形
日本活断層学会2013年度秋季学術大会講演予稿集: 60-61.

日本活断層学会2013年度大会: 糸魚川-静岡構造線と塩嶺断層
日本活断層学会2013年度秋季学術大会ポスター発表

要旨を読むと分かるが,岡谷市の塩嶺病院付近の断層の野外調査データも含まれる。以下のブログページでも指摘したが,同病院のまさに直下に,活断層の存在が指摘されていて,今回の調査でも,その周辺に,多くの断層や地すべり地形の実態が浮き上がってきた。

岡谷市・塩嶺病院直下の活断層: 岡谷市看護専門学校を設置
活断層・「塩嶺断層」の調査に対する岡谷市の姿勢: 岡谷小学校存廃と関連して

質問者から指摘されたが,問題は,その活動性(活動度)である。しかし,こればかりは,トレンチ調査のような精密な調査をしないと分からない。

上のブログでも書いたように,岡谷市議会・平成25年第1回定例会でも,調査の必要の有無が議員から質問されたものの,岡谷市役所の宮坂部長の答弁は,
調査しても活断層を特定するのは難しい,直ちに大きな危険性を判断するのは難しい
というものだった。いかにも,面倒臭い,といったニュアンスが感じられる答弁である。新設の教育機関として,このような状態で良いのだろうかと,はなはだ疑問に思う。

ポスター発表で興味深かったのは,予稿集p66-67(発表番号P-9)にある
仏念寺山断層帯に現れた断層露頭とその破砕特性 (中川康一)
であった。

大阪府豊中市で,活断層の真上にマンションは危険だとして,住民が提訴した(日本経済新聞,2011/8/26)断層の研究である。現場に立ち入って調査ができなかったというが,
もし断層が活動した場合には、地表に脆性破壊による大きな段差が生ずる可能性を示唆している。
という中川氏の指摘があるだけに,精査してほしい問題である。これも,面倒なことには関わりたくない,という当事者の気持ちの表れと言えそうである。

活断層学会で発表したついでに,同じ「つくば」にある,産総研の地質標本館を見学してきた。

以前のブログで,岡谷市の敬念寺の裏で,活断層である岡谷断層のトレンチ発掘調査の様子を紹介した。その岡谷断層の剥ぎ取り標本が,ど~んと,この地質標本間に展示されているのである。

地質標本館にある岡谷断層の剥ぎ取り標本
地質標本館にある岡谷断層の剥ぎ取り標本

岡谷断層の発掘断面図
岡谷断層の発掘断面図

岡谷断層が1000~2000年ごとに活動した証拠
岡谷断層が1000~2000年ごとに活動した証拠

是非,皆さんも一度見て欲しい。

2013年12月21日土曜日

Ecological Entomology 編集部から Greeting Mail


昆虫生態学の専門誌 Ecological Entomology の編集部から Greeting Mail が突然届いて驚いた。

差出人は,Editors-in-Chief の Prof Jane Hill, Prof Rebeca Rosengaus and Dr Francis Gilbert の連名。内容と添付ファイル画像は以下のようなものだった。

Best wishes for the holidays and a successful New Year.
With many thanks for your continued support of Ecological Entomology.
Kind regards

Greeting Mail from Ecological Entomolog
文章自体は,ごく簡単なものだが,添付画像が,なかなか凝っている。

同紙に関連する世界中の研究者に送ったのだろうか?昨年は来なかった。

日本の学会や出版社は,私が知るごく限られた範囲ではあるが,このような Greeting Mail をもらったこともないし,送ることを聞いたことも無い。

2013年12月4日水曜日

変色したアマガエル


少し前の話だが,10月21日に,岡谷市今井のコンクリート上で,ニホンアマガエル(Hyla japonica)を見つけた。最初は,小石かチューインガムの捨てたものと思った。



しかし,近づいてみると,灰褐色に変色したニホンアマガエルだった。


日本に広く分布し,人目にも付きやすい,いわゆる「アマガエル」である。通常は,青緑色をしているが,土,枯葉,コンクリートなどの上では,このような色に変色し,体の模様も明瞭になってくる。

お見事!と言いたいところだが,コンクリート上では少々目立ちすぎの感がある。やはり,人工物の色に似せるのは至難の業なのだろうか?

Welch検定が主流,単純t検定やANOVAは時代遅れ:Statwingの話題から


2016年7月26日追記

エクセル統計には,正規性も等分散性も仮定しない Brunner-Munzel 検定 が装備されている。その解説には,「マン=ホイットニーの U 検定と異なり、2標本の等分散性を仮定せず」と明確に書いてある。後述するように, U 検定も等分散を仮定することに注意が必要である。なおエクセル統計は, Microsoft の Excel と混同されるが,英語名は Ekuseru-Toukei である。

2015年5月24日に福岡市で開催された日本臨床工学会の市民公開講座で,倉持龍彦氏が, EZR で統計解析を実践しよう」と題して,EZR の利用法だけでなく,正規分布か否か,等分散か否か,などに分けて,適用される統計学的検定法を紹介した。私も,この資料作りに協力,助言した。ここでも Brunner-Munzel 検定が取り上げられた。

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t 検定や分散分析,さらにはノンパラメトリック検定の興味深い話題に,脇道にそれながら触れていく。

2 群(2 標本),あるいは,3 群(3 標本)以上の平均値の差を検定する際に,まず,分散が等しいかどうか(一様であるかどうか)調べて,それから検定法を選択するというのは,多重検定に相当する,というのを次のページに書いた。

そこでは,特に,t検定を例として取り上げ,以下のような対処法が妥当であることを指摘した。

  1. 等分散かどうか検定せず, Welch 検定だけを実施する。
  2. 従来どおり,等分散かどうか検定し,その結果によって,検定法を選択する。ただし,これは多重検定なので,例えば,Bonferroni(ボンフェローニ)法などによって,p値を修正する。

ところが前述の問題点ページにも書いたが,どうやら前者,つまり, Welch 検定だけを実施するのが最近の主流となっているようなのである。

昨年開発され,話題になりつつある統計解析ツール Statwing でもデフォルトで, Welch’s t-test
Welch’s F test ANOVA を実行するのである。

そのリンク先を読むと分かるが,もう細かい説明など抜きで,この方法で計算しろ,という感じである。説明の途中からは,正確にはWelch検定というべきなのだが,単に, t-test あるいは ANOVA としか書かれていないのである。

こうなると,大学などで教える統計学の授業や教科書でも,デフォルト?で,この問題を扱うべきだが,前述の多重検定解説ページにも書いたとおり,少なくとも大学授業関連のウェブページでは,そのような傾向になってないようである。

主流となりつつある検定法が,まだ,大学における一般学生相手の講義では,非主流なのかもしれない。

放送大学の統計学の授業でも,例えば,社会統計学入門('12)では,この問題に触れてなかったような気がする。私自身が放送大学の教員でもなく,学生でもないので,確かなことは言えないが,テレビで見た限り,この“等分散問題”は強調されていなかったと思う。間違っていたら申し訳ない。

この問題を明確に指摘している 奥村晴彦氏も,放送大学で教えていたのだが,それがコンピュータ関連の授業であったため,この問題に触れる場面は無かったはずである。

もしかすると他大学より先端的な授業内容を展開する放送大学だから,どれかの授業でこの問題を扱っているかもしれないので,もしそうなら誰か教えてほしい。

話を Statwing に戻すが,もし,等分散でもなく,正規性の仮定も満たさないデータだったら,どのように検定するだろうか,という点が気になった。

通常,非正規性のデータならば,ノンパラメトリック検定というのが定番である。しかし,このノンパラメトリック検定でさえ,例えば,最も代表的な U 検定でも,分散が異なる標本間の検定は不適当なのである。

これに関しては,例えば,粕谷英一氏のブログ参照
Mann-Whitney の U 検定と不等分散

上記の奥村氏のブログも参照
t 検定の話

あるいは,ノンパラメトリック法(岩原信九郎,1964)のU検定の解説を読むと,「2つの分布が著しく異ならないこと」と,きちんと適用条件を書いてある。

つまり,ノンパラメトリック検定だからと言って,仮定フリーというわけではないのである。ノンパラメトリック検定が,どんなデータに対しても万能であるかのような錯覚を抱いている人は注意すべきである。

そもそも,もし母分散が異なると結論されれば,それだけで母集団が異なるという意味である。このとき,代表値(平均や中央値)の差の検定を考える前に,なぜ母分散が異なるのか,それを検討するほうが,はるかに重要なことである。理論的な話題でなく,実際に,医学,生物学,心理学などのようなデータを扱う場合は,もし母分散が異なると推定されれば,その原因こそ解明して欲しいものである。

Statwing の場合は,どうだろうか?この統計解析ソフトでは,ランク化された Welch 検定を実行するようになっているのである。 Ranked T-Test あるいは Ranked ANOVA と書かれているが,もちろんこれは Welch 検定の計算に従っている。つまり,代表値の差の検定として,パラメトリックだろうが,ノンパラメトリックだろうが,Welch検定を利用するのである。ここまで徹底した統計解析ソフトは稀である。是非,試用してみてほしい。

なお,統計解析ソフト R には,多重比較を行なうのに便利な関数 pairwise.t.test がある。これは,デフォルトでは,等分散を仮定した t 検定を行い,オプションを指定するとウェルチ(Welch)検定を行なう。これに関しては,以下のページ参照:
ウェルチ多重検定と2群の分散分析 t検定,Rのpairwise.t.testを利用

リッカート尺度(Likert scale)のデータに対しては, t 検定と U 検定が,多くの場合において,同等な検出力(power)を持つことを示した以下の論文も参照してほしい。

De Winter, JCF. and Dodou, D. (2010) Five-point Likert items: t test versus Mann Whitney Wilcoxon. Practical Assessment Research & Evaluation 15(11): 1-16.

関連ページ:

私が論じた様々な統計学的な話題のリストは,研究室の「統計学的手法の話題」で見られる。