2013年10月29日火曜日

朝日新聞「声」:メダカ放せる場所、どこに?生態保護に無関心な小学校の話

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2014年11月16日追記

このブログ記事は,メダカを放したい,と考えた小学生に,適切なサポートを与えられなかった学校や教員,さらにはその教育体制を批判したものです。その生徒を批判したものではありません。この生徒が放流以前に,新聞で広く助言を求めたことは,非常に適切なことであり,優れた発想だったと思います。


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朝日新聞10月21日の「声」欄に,東京都の小学生の
「メダカ放せる場所、どこに?」
という質問が掲載された。

かつて自分が野外で採集したメダカに加え,ペットショップで買ったメダカが繁殖し,100匹を越え,飼育しきれなくなったので,放流できる場所を教えてほしい,という内容だった。

「メダカが卵を次々に産んで育てられる川や池を探しています」,という一文に,彼の気持ちが現れている。

これに対して,在来メダカを保護している専門家から,反対の意見が述べられた。

1人は,NPO法人四街道メダカの会・原田功氏
飼育メダカ自然に放さないで

もう1人は,葛西臨海水族園職員・多田諭氏
「『東京めだか』守るためにも」

いずれも在来種保護の立場から,飼育メダカを安易に放流しないよう助言している。

いわゆる「生物多様性保全」の立場から考えれば,当然の助言なのである。

しかし,である。飼育動物を安易に野外に放さないということは,学校がきちんと教えるべきことなのである。小学校低学年のうちに,そのような生物多様性保全の教育をするべきなのである。

12歳の彼が,そのような質問を発したということは,彼が通う小学校では,全くそのような教育がなされず,生物多様性保全に無知・無関心,勉強不足・学力不足の教員から授業を受けてきた,ということなのであろう。

確かに,在来種保護などというのは,所詮,人間が決めた人為的基準,と言い放つ人もいる。

しかしながら,2008年6月6日に公布施行された生物多様性基本法,および,2010年に名古屋で開催されたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)を通じて,在来種の保護や外来種への対応は,世界的な重要課題となってきているのである。

例えば,生物多様性基本法の第七条では,日本国民の責務として,次のように定めている。

国民及び民間の団体の責務
第七条  国民は、基本原則にのっとり、生物の多様性の重要性を認識するとともに、その日常生活に関し、外来生物を適切に取り扱うこと及び生物の多様性に配慮した物品又は役務を選択すること等により、生物の多様性に及ぼす影響の低減及び持続可能な利用に努めるものとする。

繰り返すが,日本国民の責務として,外来生物の適切な取り扱いを考えるように,と定められているのである。

では,外来生物とは何であろうか?

2010年(平成22年)3月16日に閣議決定された生物多様性国家戦略2010のp.17に次のように書かれている。

外来種とは,野生生物の本来の移動能力を越えて,人為によって意図的・非意図的に国外や国内の他の地域から導入された生物

これを読めば,当然ながら,飼育メダカを勝手に放流すれば,それは外来種であり,生物多様性基本法に反する行為だ,と分かる。つまり,それは法律違反なのである。

在来種保護などというのは,所詮,人間が決めた人為的基準どころの話ではなく,法律として既に定まっているのである。

小学生くらいなら,男女問わず多くの人が,メダカを含む魚類に限らず,昆虫類,鳥類,爬虫類(トカゲなど),両性類(カエルなど)の飼育を,一度は経験する年代だろう。しかし,それを野外に放すというのは,もはや法律違反の時代であることを教員は生徒に教えるべきなのである。ここで言う教員とは,担任に限らず,教頭や校長であっても良いし,むしろ,そのような管理職こそ明確に述べるべき事柄なのである。

繰り返すが,生物多様性保全というのは,現代的・世界的課題なのである。しかもそれは,生き物の問題,いわば,命の問題なのである。もしこの小学校6年間で,生物多様性のセの字も教えてもらえなかったのならば,そんなボンクラ教員だらけの学校は,さっさとオサラバしたほうが良い。

子供たちによる魚類やホタル類の放流が美談のように語られる場面が,新聞やテレビに出ることがある。しかし少なくとも,それが生態系にとって問題が無いと言えるのか,放流前に勉強し議論すべき事柄なのである。この「声」欄がある朝日新聞のボンクラ東京本社写真部ボンクラ記者・武井宏之氏のように,意図的とも思えるような,辰野町の外来ホタル賛美記事もまた,生物多様性保全の教育を阻む一因となっている。

メダカやホタルの安易な放流を知ったら,マスメディアは,その現場で,あるいは記事で,きちんと問題点を伝えるべきなのである。それが報道としての責務である。


参照
辰野の移入(外来)ホタル 生物多様性の喪失へ
長野県辰野のホタル再考: 観光用の移入蛍で絶滅した地元蛍 松尾峡ほたる祭りの背景にあるもの
ノーテンキな朝日新聞記者のつぶやき