生物科学研究所のウェブ解説“
カブトムシ雄の角長と闘争頻度について”でも少し触れたが,海外では,日本のカブトムシの属名に関する議論がいまだ続いているらしい。
BeetleForum.Net
Genus Allomyrina vs. Trypoxylus
現在,少なくとも日本国内では,日本のカブトムシの属名には,
Trypoxylusが使用されているし,私の最近の論文でもそうである。しかしながら以前は,これに対し,
Allomyrinaが使用されてきた。
しかし,この
Allomyrinaの使用には,今でも反対する分類学者がいる。Ratcliffe博士もその1人である。
Ratcliffe B.C. (2008)
Book Review. Atlas of Japanese Scarabaeoidea. Volume 2. Phytophagous Group I. Coleopt. Bull. 62(1): 63-64.
彼は,この書評で,
T
rypoxylus is a junior synonym of
Allomyrina.
だと主張している。
実は,数年前に,私が彼からメールをもらったときも,彼がかなり厳しい調子で,同様なことを主張されていた記憶がある。
そもそも,事の発端は,私の知る限り,公式には,三宅義一(1998)が甲虫ニュース123で
Trypoxylusの推奨を言い出したことにあるらしい。
ところが,この甲虫ニュースの論文は,分類学上で重要な変更を伴う内容にも関わらず,全く日本語だけ書かれていた。しかもこの雑誌は,どちらかというとマイナーな雑誌なのである。もちろん,甲虫ニュースは全国規模で読者がいる和文誌(ニュースレター)なのだが,それでも,世界規模で言えば,マイナーな雑誌であり,外国人では読む機会も少ないのではないかと思われる雑誌であった。
野村周平氏が,月刊むし339号(1999)において,このようなことは英語で書くべきだと苦言を呈して(警告して?)いたが,全くそのとおりであり,そうしなかったことが,少なくと海外では現在でも,
Allomyrinaか
Trypoxylusかと言った混乱を生んでいるように思える。