2010年12月17日金曜日

西湖で発見されたクニマス:生物多様性保全の観点から


秋田県田沢湖で絶滅したと思われていたクニマスが,山梨県西湖で見つかった。
朝日新聞2010年12月15日
共同通信2010/年12月15日

このニュースは嬉しい反面,移入されたものという見方もでき,実際,ネット上では,そのような意見も見当たる。

ホタルの移入問題を研究している私も,生物多様性保全という観点も含め,感想を述べる。

まず,ホタルに関しては,長野県辰野町松尾峡では,県外から観光用に移入したゲンジボタルで地元のゲンジボタルが絶滅した例がある(辰野の移入(外来)ホタル 生物多様性の喪失へ)。

これは辰野はもちろん,近隣地域にもゲンジボタルが当時生息していたにもかかわらず,それらを採集して増やすのは大変だから(辰野町誌の記述)という安易な理由で県外から移入した結果,こうなってしまった。

今回のクニマスが西湖へ移入された理由は,はっきりしない。
単なる増殖のためなら,現在の生物多様性保全の考えからすれば安易だったと言える。

上記の朝日新聞の記事(12月15日)で,クニマス研究者・杉山秀樹・秋田県立大客員教授が,
「田沢湖のクニマスが絶滅したのは事実。いわば国内産外来種」
とコメントしているが,私もそのような感想を抱いた。

ただし,種の絶滅を避けるためなら,ベストと言えなくても,次善の策だったと思う。

最近も,静岡ー山梨間の中部横断道建設に際して,希少なアカハライモリとモリアオガエルを移住させた例がある。
http://www.ktr.mlit.go.jp/koufu/news/h22announce/h220917.pdf

生態系保護のためには,道路を作らないのがベストだろうが,作ることが前提であれば,絶滅する恐れがある生物には,このような措置もありうる。

また,数十年前には,生物移入ということは,ごく普通のことだったという研究がある。

「なぜ移入種は排除されなければならないのか? 」
瀬戸口明久

この考えからすれば,他地域へのクニマスの放流は,もっと多く場所にあったかもしれない。
今回,偶然残っていたものが偶然発見されただけ,ということかもしれない。

この西湖のクニマス,既存の生態系に影響を与えなかった,そして今も与えていないのだろうか?

希少種だけに保護することは大切だが,保護一点張りではなく,既存の生態系への影響調査もするべきだ。

西湖では,クニマス保護のため,禁猟も検討されているようである。
朝日新聞2010年12月17日

しかし,シカのように,保護しすぎて数が増えすぎ,生態系を乱す例もあることを念頭に置くべきでだ。

辰野のゲンジボタルの場合は交雑が起きず,移入ゲンジボタルばかりが増えて,在来ゲンジボタルの絶滅が起きた。

上記の朝日新聞記事によると,西湖のクニマスでも交雑は起きていないようである。

過ぎたるは及ばざるが如し,などとならないように注意して保護に取り組んでほしいと思う。