2010年12月13日月曜日

辰野町と上高地の移入ホタル問題


上高地のゲンジボタルと志賀高原のゲンジボタルは,ともに高地の温泉地に生息する。そのため,両者を同じ外来種とみなす意見が見られる。しかしながら,両者は遺伝的には全く異なる。志賀高原ゲンジボタルは長野県在来種であるが,上高地のゲンジボタルは,長野県にとって松尾峡ゲンジボタルと同じ「外来種」なのである。次のページの解説を参照してほしい。

上高地,志賀高原,辰野町のゲンジボタル:その駆除を巡って

長野県内における移入ゲンジボタルの遺伝子調査の結果が,2010年の全国ホタル研究会・志賀高原大会で7月17日に発表された。

このうち,上高地の移入ゲンジボタルに関しては,最近さらに研究が行われ,新聞にも掲載された。
上高地にホタル移入か 規制区域で「生態系に影響」懸念(中日新聞,2010年12月11日)
上高地のホタルは人が持ち込みか NPOが発表(信濃毎日新聞,2010年12月12日)

辰野町松尾峡と上高地のゲンジボタルが,人為的に移入された外来種であることは,次の論文に記されている。


遺伝子解析による移植されたゲンジボタルの移植元判別法

全国ホタル研究会誌 第43巻 (2010年) 27-32
日和佳政・大畑優紀子・草桶秀夫・井口豊・三石睴弥


要旨
辰野町松尾峡と上高地のゲンジボタルのミトコンドリアDNAのND5遺伝子を調べて移植元の判別法について検討した。

その結果,松尾峡では,自然発生ゲンジボタルとは遺伝的に異なる滋賀県のゲンジボタルが交雑を起こさず完全に定着していることが判明した。ここでは滋賀県から意図的に観光用ゲンジボタルを購入し,移入養殖していることが歴史的事実としてあり,それを科学的に裏付ける結果が出た。

また,上高地では京都から神奈川県にまたがる地域に生息する西日本グループに帰属する県外ゲンジボタルであることが判明した。移植元まで特定できなかったが,移植されたという三石睴弥の情報を裏付けた。

結果として,辰野町松尾峡と上高地のゲンジボタルは,同じ西日本型サブグループ3に属することも判明した。

福井県内のゲンジボタルの遺伝子研究結果から推定すると,十数km以上離れた所から移植を行うことは,遺伝子多様性という点から大きな問題であり,今回の長野県内のゲンジボタル移入地の研究結果もそれを示している。


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追記

上記のように,上高地のゲンジボタルは外来種であるので,2014年になって,環境省は駆除を検討し始めている。
朝日新聞 2014年4月10日
上高地の外来ホタル駆除へ 環境省

信濃毎日新聞 2014年04月09日
上高地、蛍の光と決別 「生態系に懸念」駆除へ

辰野町・松尾峡では,観光用に移入された外来種ゲンジボタルのために,本来そこにいた在来ゲンジボタルが絶滅するという事態を引き起こしている。ホタルが舞う美しさだけに惑わされないでほしい。

なお,今後の上高地の自然保護計画に関しては,中部山岳国立公園・上高地連絡協議会による上高地ビジョン2014(仮称)に詳しく書かれている。この中で,p.27に,
ゲンジボタルなど外来種の侵入・定着状況などを調査し、効果的な防除方法を検討
と記されている。

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追記

国が年内(2014年)にも,ゲンジボタル,メダカ,カブトムシなどで,国内外来種となっている場合の対策強化を検討し始めた(毎日新聞 2014年05月12日)。辰野町の外来種ゲンジボタル養殖についても規制してほしいところである。

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追記

上高地の外来種ゲンジボタル駆除を巡っては,2014年8月17日に,テレビ朝日・サンデースクランブル美しいホタルを駆除へ・夏の風物詩に何がで,詳しく報道された。この番組に私も出演し,外来種ホタルの悪影響に言及した。

参照
辰野の移入(外来)ホタル 生物多様性の喪失へ
長野県辰野のホタル再考: 観光用の移入蛍で絶滅した地元蛍 松尾峡ほたる祭りの背景にあるもの