2010年11月19日金曜日

長野県クマ捕殺か放獣か,第2期特定鳥獣保護管理計画をめぐって

信濃毎日新聞11月18日32面(地域面)によると,長野県ではクマ捕殺か放獣か,地域で対応が大きく異なるという。

北信(県北部)では、今年97頭捕獲し全殺処分,「放獣に住民の理解が得られない」という。

一方、木曽地域(県南西部)では、68頭捕獲し24頭放獣(35%),「初めて捕まったクマは放獣する方針,住民も理解している」という。

「捕殺か放獣か以前に,地元の人たちとクマを防ぐ対策を」と,クマ対策員のコメント。この点は私も全く同感である。

疑問に思ったのは,「クマ捕殺か放獣か,明確な基準がない」という記者のコメントである。

長野県で策定した第2期特定鳥獣保護管理計画(ツキノワグマ)(平成19年4月1日~平成24年3月31日)
http://www.pref.nagano.lg.jp/rinmu/shinrin/04chojyu/08_kuma2kikeikaku/bear2ki.pdf
によると,

移動放獣の基準・(ア)殺処分対象個体,として(p20)
捕獲された個体のうち、次のいずれかに該当する個体については殺処分としてもやむを得ない。

  • 人身被害を起こした個体
  • 日中住宅地に出没しているなど、人間を恐れない個体
  • 電気柵の設置等、防除しても壊して被害を出すなど、農作物への執着が強く学習効果が期待できない個体
  • 以前に放獣した個体(錯誤捕獲による個体を除く。)で被害防除をしたにもかかわらず、被害を再発し、再度捕獲されたもの
 と書かれている。

この基準は知られているのだろうか?少なくとも一般県民は,この第2期特定鳥獣保護管理計画(ツキノワグマ)の存在すら知らないのではないか。

前述の信濃毎日新聞記事によると,長野県では今年すでに,クマ捕獲上限数151頭の2倍以上の325頭捕殺しているという。

しかし,第2期特定鳥獣保護管理計画をまずPRしなければ,その場その場の判断や住民感情で,いくらでも捕殺されてしまうだろう。
 
富山や岐阜では,クマ捕獲上限を超え,県が狩猟自粛要請している有様である。
 
毎日新聞・地方版 2010年11月12日http://mainichi.jp/area/toyama/news/20101112ddlk16040518000c.html
 
長野県でも,せっかく第2期特定鳥獣保護管理計画(ツキノワグマ)を定めたのだから,まずそこに示された捕獲上限や殺処分基準を県民に広く知ってもらうことが重要であろう。しかし,少なくとも一般人に対して県が積極的PRしたという話は聞かない。また,計画策定に当たって公聴会が開かれたはずだが,どのくらいの県民意見を集約できたか分析されてないようである。形式的には公聴会をやった,ということであろうか?
 
これでは,クマが人里に多数出現するようになってから,殺せ,殺すな,という議論が沸騰しても,第2期特定鳥獣保護管理計画(ツキノワグマ)は機能しないであろう。
 
前述の信濃毎日新聞記事では,この保護管理計画について言及がなかった(取材してない?)ので,私は信濃毎日新聞社に質問のメールを送った。
 
長野県が「生物多様性地域戦略」を策定中の今,私は専門のホタル保護を通じて,県自然保護課に色々意見している。その際も,計画内容を県民ひとりひとりに知ってもらうという努力が県には足りないように感じている。これは私だけの感想ではなく,11月10日に長野県庁で開かれた「生物多様性長野県戦略策定委員会」において,複数の委員からも似たような感想が出された。

皆さんは,第2期特定鳥獣保護管理計画に関する県の対応をどう思うだろうか?